ねっとりした練りようかんのような闇を、深い森がつつんでいた
もっさり茂った木々に隠すよう小さなレンガの家が建っていた
家の中も外の森に負けないぐらい暗く、ゆいいつ部屋の中心にある鍋だけがボコボコと蛍光ミドリに光っている
怪しい色に照らされて少しだけ見える部屋には玉ねぎ とみせかけて小さな干し首が鈴なりにぶら下がっていたりした
ぐつぐつ煮える鍋をかきまわしているのは黒いローブを頭からかぶった若い黒髪の男
癖のつよい髪が汗で首にへばりいている
一生懸命かきまぜている

「師匠・・・」

その声に反応したように部屋の後ろでなにかが動いた
うーんとうめくような声もきこえる

「あんた昼から寝てるでしょ起きてくださいそしてやってくださいこれ・・・俺もうギブです」

そういうとローブの男は鍋から離れて、しばらくすると部屋が明るくなった
電気がついたはずの部屋はいぜんとして薄暗いが、
ピンクと水色のへどろにまみれた流し台や、ぐにゃぐにゃ曲がった変な形のフラスコ、鍋と同じテーブルの上におかれた頭蓋骨、みどりの炎が燃える暖炉などの怪しいものがより鮮明にみえるようになった
机の横の赤いソファからもうっとホコリをたたせてもう一人、ローブを着た人物が起き上がった
このローブ、地は黒なのだろうがさまざまなペンキにまみれてとてもカラフルに仕上がっている
ポップなローブを着た男はすこし眠そうな目をして鍋まで近寄り中をのぞく。黒いローブの男はちょっと心配そうに横でみていた

「ハナミズみたいな色だね」
「師匠の鼻水こんななんですか?」
「いや俺はもうちょい透き通っ・・・バカだね 情けないよこんな弟子を持って」



カラフルな男が鍋に手をかざすとたちまち液体がきれいなブルーになった
実はこの男ちまたで有名な魔法使いで橘という
黒いローブの男はその弟子の千尋だ 


「冷めたらタッパーにうつして冷蔵庫にいれるんだよ ゼリーみたいになったら呼んでね」
「はあ!?また寝るんすか!」


橘はとても力のある魔法使いである
だから今もけしておかしをつくっているのではない・・・たぶん


「このナマケモノが!バトンタッチ!!